トイレの床がじわじわと濡れているのを見つけると、私たちはすぐに便器や配管からの「水漏れ」を疑います。しかし、床が濡れる原因は必ずしも故障だけとは限りません。特に、夏場や湿度の高い季節によく見られるのが「結露」です。トイレのタンクの中には、常に冷たい水道水が溜まっています。一方で、夏場のトイレ室内は気温も湿度も高くなりがちです。この温度差によって、冷たい飲み物を入れたグラスの表面に水滴がつくのと同じ現象が、トイレのタンクや給水管の表面で起こるのです。発生した結露の水滴は、重力に従って下へ下へと流れ、やがて床にたどり着き、まるで床から水が湧き出しているかのように見えることがあります。これが、じわじわとした水漏れと間違えやすい原因の一つです。結露かどうかを見分けるポイントはいくつかあります。まず、床の濡れ方が便器の周囲全体に広がっている場合や、タンクの側面を触ると湿っている場合は結露の可能性が高いです。また、漏れているはずなのに水道メーターが回っていない、あるいは晴れた日よりも雨の日の方が濡れやすいといった特徴も見られます。もう一つ、意外な原因として考えられるのが、尿の飛び散りです。特に小さなお子様や男性が立って用を足すご家庭では、気づかないうちに便器のフチや外側を伝って尿が床に垂れていることがあります。これが時間の経過と共にじわじわと広がって、水漏れのように見えるのです。この場合は、アンモニア臭がするのが特徴です。このように、床が濡れているからといって、必ずしも大掛かりな修理が必要な水漏れとは限りません。慌てて業者を呼ぶ前に、まずは結露や汚れの可能性を疑い、タンクの表面を拭いてみたり、床を掃除して臭いを確認したりするなど、冷静に状況を観察してみることが大切です。